U理論「プレゼンシング」
Uの底について、つまり「プレゼンシング」についてみてみよう。U理論は、変化の過程について書かれてある。変化するものは、個人だけではなく組織にも当てはまる。変化するには、まず変化を感じる必要がある。しかし、実際に変化することは難しい。何が難しくしているのかといえば、過去に執着するからである。プレゼンシングという変化の過程では、未来の領域に足を踏み入れながら、かつその領域と一体化する。そのとき過去に囚われている執着をも捨て去る。著者のC・オットー・シャーマーのいうダウンローディングは、過去の習慣やパターンを繰り返すだけであり、未知に出逢う機会があっても、知っていることしか知ろうとしない態度であるため、本質はなにも変わらない。これではプレゼンシングには程遠い。著者は、ダウンローディングの習慣を停止すると、「観る」という状態に入ると述べる。「観る」では認知は鋭くなり、直面している現実に気づくようになる。この認識の場から活動すると、組織の周縁部から、観察者と観察されるものが接する境界でものを見るようになる、と言う。「観る」について、重要と思われる箇所にはこうある。「私は自分自身に人生を通じて、人が直面するにはひどすぎる状況というものに遭ったことがない。私がみた破綻は、組織の内外を問わず、必ず、否定すること、つまり、見ないこと、直面しないことから生じていた」。つまり、眼の前の現実を直視することが、プレゼンシングの前提となること、さらに変化するための条件でもあることを強調する。次にこう述べる。「プレゼンシングは出現する未来の源からものを見始めると起こる。過去の存在(現在の領域)、未来の存在(出現する未来の領域)、真正の自己の存在、この三種類の存在の間の境界が崩壊する。この共プレゼンス、つまり三種類の存在が融合し共鳴するようになると、我々は深いレベルの転換、つまり我々がそこから活動を起こす場が変化するのを経験する」。プレゼンシングとは、転換点であるが、「視座の転換」と「手放す」は重要なキーワードである。転換を果たした感覚についてはこう書いている。「自己を超越した高められた自己の感覚から、つまり観察者の組織体の内側と外側の両方を備えた場から活動すると、人は自分自身をシステムの一部として見るようになり、人々がどのようなシステムを具現化しているのかが見えてくる。単一点からシステムを観察しているのではなく、周囲の領域の複数の視点から同時に観察しているように感じる」。引用は「U理論」英治出版から。
追伸。この本に注目する理由は、現在(2020)のコロナの流行である。世界を大きな組織体とみるならば、いままさにプレゼンシングの状態にあると思うからである。
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