彼シリーズ「絶望特急」
彼は、この危機のあいだに大回転を開始した
絶望が疾走する!
悲しみの駅を、次々と通過して
絶望特急だけが、光輝を放ちながら滑るように飛ぶ
風景はますます希薄になり後退してゆく
ただただ、疾走疾走の連続と「失踪」
どこに向かって?
目的地がないからこそ回転速度が高まる
逃走して駆け抜ける!
胸に大いなる空虚を抱えながら
闇の中を一目散に走る
絶望を唯一の燃料として、空虚を運ぶのだ。
現在という名の主が、鞭を打って
彼を無目的な疾走に駆り立てる
そうして瀕死の馬は、脚をやたらと回転させる
(すべては深い沈黙のなかで)
世界の沈黙。長い沈黙。
世界の舌は切断されてしまった!
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