眼に見えないものは頭で見る

「分からない」といつも心の中で繰り返す。分かるのは自分に近くて親しいものばかり。遠くにあるものはその距離を認識している時点で私の視野に入っているが、知りたいものは遠く離れていることさえ明らかになっていない。知りたいことのみ知るのでは何も進歩していない。知を固定しないから、不安定で曖昧だ。考えを進める印となる起点を固定しないという意味である。きょう獲得したが明日には不確かになってしまう。積み重ねる蓄積はなく、まいにちゼロからやり直さないといけない。まるで貯金の反対で増えていかない。そして未来には不確定要素が多過ぎるから、いちにち単位で生きている。いちにちが成功しても次回のいちにちで失敗する。将来的な自分の量を少なくして現在の自分の量を増やす。つまり現在に接近しながら強固に「いま」に生きる。唯一ふらふらしている姿勢が未知の知識の小さな声な囁きを聴く絶好の契機になるだろう。意識よりも無意識のほうを尊重するのが危険な賭けであるのは承知している。しかし秩序と無秩序に境界を設けない。これもすべて他者を知るためなのだ。既知の知を連続してつなげるのではなしに。

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