カフカ「あるアカデミーへの報告」出口⑴

…そこで、私はやめたのです、猿であることを。明快で美しい思考の歩みです。この思考の歩みを、私はなんとなく腹で考え出したに違いありません。というのも、猿は腹で思考するのですから。私が出口ということで理解しているものを、皆様方には正確にお解りいただけないのではないかと心配です。この出口という言葉を、私は最も十全たる意味で用いています。自由と言わないのは意図があってのことです。私が考えているのは、あらゆる方向にひらかれた自由という、あの大いなる感情ではないのです。猿であった頃、私はその感情をおそらく知っていたと思いますし、この感情に憧れる人間たちとも知り合いになりました。しかし私自身はと申しますと、昔もいまも自由を求めてはおりません。…

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