フロイト「日常生活の精神病理学」
第9章 症状行為と偶発行為
一般に、自分の思いをどんな言葉で装い、どんな比喩で着飾るかは、自分で選んでいると考えられがちである。ところが、少し詳細に観察してみると、表現の選択を決定する上で別の様々な観点が関与し、思いや考えという形を取りながら、そこにもっと深い、時に自分でも意図しない意向がほのかに透けて見えることが分かる。ある人が好んで用いる比喩や言い回しは、その人を評価する上で無視できないことが多い。また、目下のところ背後に留め置かれてはいるものの、語り手を強く捉えて離さない主題を暗示していたりする。私は、ある人が一時期、理論的な話の際に繰り返し「もし何か閃きが急に頭を貫いたら」という表現を用いるのを耳にした。しかし私は、その人が、先頃、息子の被っていた戦闘帽がロシア兵の銃弾によって前から後ろに貫通されたという知らせを受け取ったことを知っていた。
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