夢の太古的特質と幼稚性
フロイトの「精神分析学入門」より第十三講。「夢の太古的特質と幼稚性」について考える。心の底を掘りすすめると生物の太古的な形態と幼児性に辿り着く。夢の働きが退行にある。そして幼児の性生活は倒錯的であるという。夢をみるとはそこまで降りていく作業になる。フロイトは「夢は毎夜、私どもをこの幼稚型の段階につれもどす」といい更に「心的生活における無意識のものとは幼稚型のものにほかならぬ」と主張する。夢の顕在内容と潜在思考は区別しなければいけないが、夢の倫理性の無さ、分析による内容の邪悪さに嫌悪感を抱くのは致し方がないとしても、人間の本性がその深層に於いては信じられないほど非倫理的であり放埓を極めている事実は認めよう。私の考えはこうである。つまり、夢の役割についてであるが、毎夜の睡眠により心理的に昔に戻りそこから日中に消耗されたエネルギーを回復しているのではないか。夢を見たあとの余韻に浸っていると何かとても懐かしい感じがする。その印象は心的エネルギーを回復する。(現実に人は過去を回顧して休息する)。しかしそれは決して理性的なものではあり得ず寧ろ不道徳ですらある。悪魔的な体験から一時的にエネルギーの供給を受けると解釈できないだろうか。善悪のまだ未分化で倒錯的である幼稚性に遡るのだから当然だ。このような原始的な心にはまだ判断力という概念はない。判断力のない領域に判断力を持ち込もうとするから夢の分析に否定的になるのだろう。フロイトの次の言葉は重要。「かつて支配的であり、独裁的でさえあった昔の幼稚型のものはすべて、今日では無意識的なもののなかに数えなければならないということです。…無意識とは独自の願望の動き、独自の表現様式、およびいつもは活動していないが独自の心的なメカニズムをもった特殊な心的領域なのです。…」。
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