2021.12.26 12:32彼シリーズ「2222年」彼はみずからの仕事の目的を知らない。もし仕事にはじめと終わりがあるとしても、そのどちらも霞んでいた。仕事は、突然なんの前触れもなしに眼のまえに現れる。彼の意向を無視するかのように、あるいは人格を否定するかのように仕事だけが突発的に現れる。それがどうも上空から落ちてくるらしいのだ。彼はこうして先のみえない労働に機械的な心でもって専念せざるを得ない。しかも仕事の内容について知ることはできない。上層部の...
2021.12.19 14:42特殊商品としての書物あらゆるものを商品と見做すことができると仮定した場合、特に書物という商品について調べてみたい。というのは、これが他のどの商品よりも特殊に思われるからである。マルクスは「資本論」を著したが、これは書物であった。演説等で思想を表現するのは、より噛み砕きわかりやすくするためである。その生の演説でさえ書物の形式に置き換えられる。さて、一般的な商品と書物という商品とでは、どこがどのように異なるのだろうか。一...
2021.12.14 14:04根源の不思議あるものとあるものが関係するか、若しくは一致するかによってしか何も生じない。少なくともひとつ以上なければならない。完全なひとつは何も産まない。例えば、意識がある。意識が生じるためには、ふたつ以上の意識を生じさせるような何かがなければならない。なにかとなにかが衝突したときに意識が生じる。ひとつが一方向に流れるだけでは意識はない。滞留するか留まるかしなければカタチにならないのだから。たとえカタチになっ...
2021.12.07 13:01点滅から空想へ点滅という現象を調べてみよう。私たちが点滅している光を見ているとき、光がない瞬間も含めて包括的に捉えている。だが点灯する光と、次に点灯する光との時間的間隔があまりにも大きい場合には点滅と呼ぶことはない。点滅という現象は、またそれが点滅と呼ばれるためには、二者の光の関係がなければならない。加えて、そこには時間的間隔が一定範囲に収まっている必要がある。現象や存在について考えるとき、それらのものが認識可...
2021.12.04 13:41数学的存在者ハイデガーはデカルトの数学的認識についての考察を「存在と時間」のなかで次のように述べている。「数学的認識は、その認識のうちでとらえられた存在者の存在を確実に所有していると、いつでも確信しうるような存在者の把捉のしかたであると考えられている。数学的な認識において接近可能となる存在を満足させるように、その存在のしかたからして存在しているもの、それこそが本来的な意味で存在しているとされるのである」「本来...