2019.10.30 15:44彼シリーズ「スマートな死」何か様子がおかしい。何がどうおかしいのか判然としない。けれども、おかしいという感覚だけは確かなものだと哲学的命題の如くに確信できた。彼は単調な日常生活を淡々と特別な感情なしに送っていた。寧ろ丁寧な生活と言えた。無意識に天を見上げた。空にはかんかんと突き刺すような太陽が威風堂々としている。彼は、こころと裏腹なこの太陽を憎んだ。ふと背後に映る影に目をやる。「なんか違うな」。「俺の影ではないな」。不思議...
2019.10.29 13:24「世界経営者会議」2019.10優れた経営者は世界の動きをよく読んでいる。また現実を正確に把握し熟知している。次の言葉が自分の認識と大きく違っているようなら、それはたぶん間違っているだろう。修正する余地がある。他人事ではない。結果をだしている経営者の言葉は真摯に受けとめる。「世界はいま大変な状況にある。国や地域の深刻な対立が起こり解決策も見えない。恐らく第二次大戦後、最大の危機にあると思う。ただピンチこそがチャンスだ。ピンチに真...
2019.10.28 14:53洩れだす意味の了解不可能概念の了解、または意味の理解について考える。了解するとは概念のカタチらしきものを直感的に把握できたから。それは不動なるもの把握である。心に親近感が生じ、これまでの思考との距離が縮まった結果である。鍵穴に鍵がうまく接続できたようなもの。秩序や法則の認識に成功したから眼の前に新しい視界が開けたのである。ここで認識の前段階の議論は省略する。意識に表出された概念は何らかのカタチかイメージを有する。だが、こ...
2019.10.27 17:11サー・F・M・イーデン『貧民の状態、イギリスにおける労働階級の歴史』から。「われわれの地帯では、欲望の充足のためには労働を必要とし、それゆえに、社会の一部は、倦まず労働せねばならない。…若干の人々は労働しないで、しかも、勤勉の産物を自由に処分しうる。しかし、これらの財産所有者は、このことを、一に文明と秩序とに負うているのであって、彼らは全くブルジョア的諸制度の被造物である。なぜならば、これらの制度が、労働以外の手段で労...
2019.10.25 16:38ドストエフスキーの多声性ドストエフスキー小説のポリフォニーについて。小説の中の登場人物たちは独立した個として自由に振る舞う。巷の小説がモノフォニーであるのに対してドストエフスキーの作品はポリフォニーとして構築されている。独立した人格がいくつも登場して物語が進行する。作品と作者の関係はどうのようになっているのか。作品を書かないドストエフスキーは考えられない。書くからこそドストエフスキーになれる。執筆しているとき真にドストエ...
2019.10.22 14:45「嫌いな人」という名の自分自己とまったく関係のない人に対して好きになったり嫌いになったりする感情は起こらない。自己と多少なりとも関係があるから好悪の感情が起こる。無関係に好き嫌いの情は発生しない。嫌いになるのは自己の内面的な感情と密接に関係している。けれどもそれは意識されないままでいる。自己と異なるからとか、自己と違うから嫌うのではない。むしろ逆である。自己が相手と同じ性質を有しているから嫌うのである。つまり相手に自己の認...
2019.10.21 12:50夢の太古的特質と幼稚性フロイトの「精神分析学入門」より第十三講。「夢の太古的特質と幼稚性」について考える。心の底を掘りすすめると生物の太古的な形態と幼児性に辿り着く。夢の働きが退行にある。そして幼児の性生活は倒錯的であるという。夢をみるとはそこまで降りていく作業になる。フロイトは「夢は毎夜、私どもをこの幼稚型の段階につれもどす」といい更に「心的生活における無意識のものとは幼稚型のものにほかならぬ」と主張する。夢の顕在内...
2019.10.17 16:54GOD.GOOD.GOOOD!TIME.主は、世界を創造してGOODと言った。しかし一日休んだ後なんだか付け忘れたものがあるな、と考えていた。そうそうそれは時間である。「時あれ!」と号令をかけると世界がゆっくりと動きはじめた。創造物は主に逆らうものだ。この時間も例外ではなかった。まっすぐだけ、しかも一定の速度で歩くなんて無理だ。冗談じゃないと駄々をこねると踵を返してもときた道を逆方向に歩きはじめたのである。創造物も時間の向きに従い誕生し...
2019.10.16 13:55空中犬カフカの「いかに私の生活は変化したことか」という作品について。空中犬という種の犬が登場する。「…全身の大きさが私の頭とさほど違わず、年をとっても大きくはならず、もちろん虚弱、見たところ作りものめいた、未熟児風の、超念入りに毛の手入れをされた代物で、まともなジャンプひとつできないとのこと。この犬が、話では、空中高くを漂っており、でも漂いながら仕事をしているとは見えず、ゆったりとくつろいでいる、という...
2019.10.15 13:22美ー賢さの親戚賢さと美は似ている。絶妙な均衡を保つところに美があるように、賢さも全体の調和を維持しているように見えるから。危うく均衡を逸しようとするところ、かろうじて調和を保つとき美が生じる。賢さについても同じで、善良さや正義感と正反対の悪魔性や大いなる矛盾とがあって、それらが上手い具合に釣り合っているのでないかと想像する。両者が互いに打ち消しあっているともいえるかも知れない。どちらも隠されており外見が総合的に...
2019.10.11 17:40情報の掃除いつでも翻弄される。さまざまな人がさまざまなことを言う。彼らは重要なことと称して主張するのだが、それが世の中に溢れかえっている。いったい何を信用したらいいのか。誰を信用したらいいのか。情報がありすぎて困惑する。大切だし重要なのだがそれらの量が多すぎる。一貫した信念を持たずしては選択し判断できない。判断とは方向を決定することである。方向が決まると取捨選択が可能になる。場当たり的にあっちに行ったりこっ...